2004年4月12日(月)09:45

「巨大な平和プロジェクト」

ブリュッセル(AP)

5月1日に10ヶ国が欧州連合に加盟する。欧州委員会のギュンター・フェアホイゲン拡大担当委員(社会民主党)はブリュッセルで行われたAP通信とのインタビューで、この歴史的プロジェクトに対し不安を煽らぬよう戒めた。以下にインタビューの全文を掲げる。

AP:EU拡大に対する懐疑的な声が高まっています。どのようにこれに答えますか?

フェアホイゲン:二つのことをきっぱりと言っておく必要があります。第一にEU拡大は巨大な平和プロジェクトなのです。ユーロやセントで勘定できる性質のものではありません。しかし現在のヨーロッパに目を向けてみる価値はあります。そうすれば、これから私たちの仲間になるかつての共産圏で平和、安定、安全の保証に成功したことが分かるでしょう。コソボへの部隊投入にこれまで100億ユーロが費やされました。これはこの15年間に私たちがEU新規加盟国に支出した額のおよそ半分です。このことを考えてみれば、EU拡大がお金では計れない利益をもたらす平和プロジェクトであることが明らかになるでしょう。

第二に拡大は人々に否応なく降りかかる多くの問題の原因ではありません。もちろん人々は問題を抱えています。もちろん国境を越える犯罪の問題や、不法移民、経済競争の問題もあります。しかしこれらはすべて拡大とは関係なく、私たちみんなが歓呼の声を上げた鉄のカーテンの消滅、共産主義世界の崩壊の帰結なのです。拡大は問題ではなく、この状況に対する唯一の現実的解決策なのです。なぜなら拡大こそが経済的均等化をもたらすからです。

AP:欧州委員会が10月にトルコとの加盟交渉を開始する見込みは、どのくらいあると考えていますか?欧州委員会はドイツ政府を含む政治的圧力の前に、加盟交渉開始をそもそも拒否できるのでしょうか?

フェアホイゲン:ええ、それは可能です。私は、欧州委員会の不可侵性が揺るがされないことが最も重要と考えています。言い換えれば、私たちはデータの正確さ、客観性、さらには中立性が誰からも否定されないような報告書を発表することができなくてはならないのです。選択肢は自由です。

AP:しかし2003年秋のトルコの加盟に関する進展報告書では、相当の改革の必要性が指摘されました。トルコはいったい10月までにこれを成し遂げることができるのでしょうか?

フェアホイゲン:ともかくもこの報告書では、改革テンポの注目すべき勢いが示されています。この勢いは続いています。エルドアン政権は、トルコの民主化、自由化および近代化を推進するという断固たる姿勢を示しています。これは実に感動的であり、また全世界から評価されています。またこの政策はトルコ国民の圧倒的多数から支持されています。このことは重要です。なぜなら、この政策に対しては強い影響力のある反対者もいることを見逃してはならないからです。というのもまだトルコは私たちが望むような国ではありません。私の現在の印象では、この改革の実施に際して、改革のプロセスは持続的で、後戻りせず、安定したと私たちが判断できるだけの数の民衆の支持が得られたかどうかが、最終的には決定的な問題になると思います。

AP:キプロス問題の解決なしに加盟交渉が開始されることは考えられますか?

フェアホイゲン:ええ、考えられます。なぜならキプロス問題は加盟交渉開始の条件ではないとEUは明言したからです。しかし政治的な関連はあります。ですが私は、解決に至らなかったのがトルコの責任でないとすれば、この問題にかこつけてトルコを陥れてはならないと思います。

AP:現欧州委員会の任期は10月末で満了します。同僚に当たる3名の欧州委員は退任後に自国で重要なポストに就くことが決まっています。それでもなお欧州委員会は行動能力を保っていると言えるのでしょうか?

フェアホイゲン:これは将来の良い範例になると思っています。もはや人々が、ブリュッセルの欧州委員会に左遷されたというような気持を持つことがあってはなりません。そうではなく、欧州委員は自国でも重要性を持ち、また再び自国で重要な任務を引き受けられる仕事なのだと認識される必要があります。欧州委員会の機能性はこの件で損なわれてはいません。これからは欧州委員会をパンチングボールのように扱えるなどと考える人に対しては、誰であれ警告します。私たちはまだ覇気に溢れています。

AP:あなた個人はいかがでしょうか?経済担当の新たな特務欧州委員 Superkommissar*)に就任するだの、ドイツ政府に戻るだのと、いろいろ憶測が飛び交っていますが?

フェアホイゲン:ええ、それはみんな憶測にすぎません。私自身には責任はないのです。まだ人事を決定する時期には来ていません。

インタビュアーはAP通信員のアレクサンダー・ラッツ(Alexander Ratz)

原題:≪Ein gigantisches Friedensprojekt≫

訳注:特務欧州委員 Superkommissar とは、2月中旬に独仏英首脳会談で提案されたEU経済政策の権限を統轄する副委員長格の新ポスト。フェアホイゲン委員はドイツ政府から内々に就任を打診されたと報じられている。本HP「EUの機構改革」2004年2月18日から20日のニュースを参照。




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